版画の話・絵の話

   お知らせ

版画の話・絵の話も、100回を迎えリニューアルを考えています。これからは、もう少し幅を広げ、絵と花の話を中心に時々の想いを綴っていきたいと思います。

          徒然の記(絵と花とetc.)をご覧ください。

2013/8/21

 

 

     孔版について

布や型紙の細かい穴を通して、インクを紙の上に押し出して制作する版画を孔版と言います。シルクスクリーンが代表です。昔懐かしい謄写版などもこの方法です。

この方法は、多くの版画技法の中で唯一、下地が反転せず、そのままの形で刷り上がってきます。

シルクスクリーンはインクののりがよく、発色のよさが特徴で、均一な色面がすりやすいので、抽象作品など現代美術に適しています。

印刷技術の進歩と共に将来の展開が期待されるところです。

 

 

     平版について

版の表面を彫ったり、彫り残したりせずに、版の表面は平らなまま、インクののる部分とのらない部分を作り転写する版画技法を平版と言います。

リトグラフがその代表で、かつては石版が一般的でしたが、現在では、取扱いの簡単な亜鉛版やアルミニュウムなどが使われます。

インクがのる部分とのらない部分を作るには、科学的な反応を利用します。簡単に言うと油と水の反発を利用し、油をひき付けるリトクレヨンなどで描画して油性インクをのせれば、描画した部分だけインクがのることになります。この方法を木版に応用したのが、木版リトグラフと言い簡単に版画が作れるキットなども発売され、足踏みにより大型版画の制作などもできます。学校などで普及されれば面白いと思います。

平版は自由に描いたものが、そのまま版画になりますので、自然で親しみやすい版画ができる一方でエスタンプ(複製版画)などに利用されることもあるのが難点です。

 

 

    

   その100 アート文化発信のこと

またまた、椿原さんのブログの転用で恐縮ですが、この欄の100回にふさわしい話題なので使わせていただきます。

クールジャパンの話は前から聞いていたことですが、アートや文化も政治や国の強力なバックアップがあれば世界的に大きな流れに乗りやすいことは明白です。

 

8月20日

河口湖美術館で開催されているWonderful My Art「高橋コレクション」展に安倍首相がお見えになった。
この展覧会は河口湖ミューズ・与勇輝館を運営している彩鳳堂画廊社長・本庄俊男氏が企画した展覧会で、私も見に行って、一個人がこれだけの現代美術の大作のコレクションをされていることに感嘆したが、一般の方には馴染みがないのか入場者はいま一つで、本庄氏が河口湖で夏休みをとっている安倍首相が見に来てくれないかなと言っていたのが実現したようだ。
その折に本庄氏が首相にお話したことがフェースブックに載っていたので、転載させていただく。

安倍首相にお話したのは、総理に成られて直ぐに、170億円の「クールジャパン戦略」を立ち上げられた事で美術関係者は凄く喜んで歓迎した事を話しました。
しかし内容が、アニメ、マンガ関係に片寄るのは如何なものかとも話しました。
日本のサブカルチャーはすでに海外では定評があり今更の感もあります。...
私達は、日本のハイカルチャー(純粋芸術)を世界に発信 支援して欲しいと お話をして、此処に、高橋龍太郎先生が個人で私財を注ぎ込み作家支援した二千点に及ぶ素晴らしいコレクションが存在するのだから、今度は国が文化発信をして日本文化度の高さを主張して欲しいとお願いしたのです。
つまり、高橋コレクションを海外に紹介して発信して行く事の支援願いです。
纏まったコレクションが一箇所にあるのだから、シッピングとか関係者の渡航費、会場費を含めても1億円もあれば実現出来るのでは無いでしょうか?
それにより、諸外国に日本の現代アートの素晴らしさをアピール出来ればと、1960年代「具体派」の例を取りパリとニューヨークで大フィーバーしている現実を折り込み話したのです。
河口湖町長と財団の局長を交え1時間以上時間を割いてお茶を飲みながら門外漢の私の話を聞いて頂きました。

日本はマンガ、アニメばかりの国でなく千数百年に渡り培った純粋芸術が存在するのに勿体無い話ですよね。

文化庁でも前向きに検討頂いているので実現は不可能ではないような気がしています。

     



新聞でも紹介されていた。

夏休みで山梨県に滞在中の安倍首相は19日、山梨県富士河口湖町の河口湖美術館を訪れ、世界的な評価が高い現代アートの奈良美智(よしとも)さんや草間彌生(やよい)さんらの作品を鑑賞した。

同県鳴沢村の別荘近くの飲食店で食事をした際、従業員から勧められて訪問したという。
鑑賞後、首相は記者団に「素晴らしい。もっと発信しないともったいない」と語った。

(2013年8月19日20時04分  読売新聞)

  安倍首相は私の高校の後輩ということもあって応援させてもらっているが、是非日本のアートを海外に発信していって欲しいものである。

先日、河口湖美術館の入館者が少ないと聞いていたのでとても良かったと思います。

ここに出てくる、本庄さんの画廊へは昔よくお邪魔していたのを思い出します。画商さんとしては少し変わった方で、寡黙ですが粘り強く、狙った作家の作品は必ず手に入れる、気に入った作品は売らないという印象でした。「これ戴きます。」というところ迄行って「その作品はチョット」といわれたことも何度かあります。

このような形で、活躍されているのを知り、成程と安心しました。

 

 

   その99 画廊の夏休みのこと

月遅れのお盆を控え、連日暑い日が続いています。35度の猛暑は当たり前で、最高気温40度以上のニュースも耳にする日々です。

私も含め、年配のコレクターには画廊めぐりも大変です。熱中症のことを考えると画廊めぐりなどと悠長なことは言っていられません。ブログを見ていると、今日は暑いので必要最小限のところだけ覗いて早々に帰宅したというものを頻繁に目にするようになりました。直行直帰の心境です。

こんなせいでもないのでしょうが、今年の画廊案内では、夏休みの長いのが目につくようです。通常は3~5日程度が多いのですが、土日も入れると9~16日というのも目につきます。高齢のお客の多い画廊ほど長いのかは定かではありませんが、お客・画商とも高齢化が進んでいるのは事実のようです。

そういえば、先日行った六本木ヒルズのシャワーミストも、下を通っても少しも涼しくなかったのを思い出しました。この前通った時は、繊細なシャワーはとても気持ちよかったのに・・・・・

訂正 シャワーミストではなくドライミストというのが正解です。濡れない霧「ドライミスト」といい、細かい霧を噴射させることにより、蒸発する際の気化熱の吸収を利用して周辺の温度を下げる装置のようです。

 

 

   その98 お絵かき大会が六本木に進出のこと

夏休みのせいでしょうか? 電車も、銀座も、六本木も、どこへ行っても混んでいました。有楽町の近ツリもやたら混んでおり、順番を待たずに六本木へ・・・森ビルでは、帰りがけ方向感覚を失いどこでまちがったか、メトロの駅に行くのに迷ってしまいました。

今日は、A/Dギャラリーで行われている、お絵かきLIVEの最終日でした。大作はまだ未完の作品もあり、何人かの作家がお絵かきに格闘していました。それぞれの作家が思い思いの格好で描いているのは壮観です。

森美術館のLOVE展やセンターアートギャラリーのハリーポッター展からの流れもあり、会場は子供から大人まで常時お客さんで大盛況でした。非常にタイムリーな企画だったようです。9月には完成作品が、もう一度お披露目されるとのことです。それぞれ納得のいくまで描きこまれた作品を想像するとわくわくします。

このような素敵な企画を通じ、各作家がどんどん成長していくのを楽しみにしています。

         お絵かきLIVEの様子は、アートアイガさんの

         ホームページをご覧ください。

                      アートアイガ

2013/8/4

 

   その97 オークションのこと

先日、3点ばかりの絵をキャスターに乗せ京橋まで運んできました。夏のオークションに出してみるためです。

今までオークションでは、ガラクタのような安い絵を買うだけでしたが、少し売ってみようかななどと考えたからです。今では、ほとんど名も聞かない作家の作品ですからほとんど値が付かないかもしれませんが、少しはおこずかいにでもなればいいななどと考えています。

美術品は、買うのは簡単ですが売るのはなかなか大変です。

お金儲けとわりきって、株のように売買を繰り返している人はそれなりに上手く出来るのでしょうが、私のように、版画の普及のためとか、若手作家の育成のためとかと言っていると、なかなか処分するチャンスを見つけることが出来ません。

そのような中で、オークションはなれれば有効な方法ですが、現在のような経済情勢では、まず、まともな値は望めません。アベノミクスが成功して、あと2~3年でも好景気が持続すれば、少しは絵画にもおこぼれが回ってくると思うのですが・・・・・

 

   その96 コレクターのこと

その95で世界のコレクターの記事を引用させていただきましたが、40年近くもコレクターをしていると? 必然的にいろいろなコレクターの方にお会いすることがあります。世界に名をはせるような人とは及びもしませんが、それでも数百、数千のコレクションをお持ちの方とお目にかかることもしばしばです。

日本においても、個人美術館などを運営している方も少なくありませんが、その多くは公開せずにひたすら所蔵しているのが多いようです。

美術館を持つ企業もありますが、名が通ったところは数十館といったところでしょうか。世界のそれと比べると、日本の美に対する認識の低さが見えてきます。

ヨーロッパやアメリカの財団が、だれだれの作品を買いに入ったなどという話を聞き、それが日本の作家だったりすると少なからず興奮します。

日本の企業もバブルの時などに、お金に任せて絵を買いあさったことがありますが、今ではその多くを手放してしまった経緯もあり、あまり評価されていません。

コレクターも世界のトップクラスともなるとすごいものです。

 

   その95 世界のトップコレクターのこと

ギャラリー椿の椿原さんのブログに、世界のトップコレクターのニュースが紹介されていたので転載させていただきます。

 

こんな記事が出ていたので紹介させていただく。
ここに出ている日本人コレクターのお一人とは僅かながらの接点はあるが、海外を含め、その他の方とは残念ながら袖擦りあう縁もない。
ユニクロの柳井氏は家がご近所という縁だが、広大な敷地にある大豪邸をただ眺めるだけである。

アートコレクターズ・イン・アジアから引用。

アメリカの美術雑誌「ARTnews」が7月9日に、今年度の「The ARTnews200Top Collectors」を発表した。
1991年から毎年発表されているこのリストは美術界のみならず、ビジネス界でも注目されている。

今年の200人リストに、大林組会長の大林剛郎と中国からのカーディーラーの楊濱、出版社社長の邵忠、娯楽会社社長の喬志斌とDomus Collectionの創立者アメリカ籍華僑の張明が新登場。
5人を含め、アジアからのコレクターが14席を占めした。
日本からは、現代美術から骨董、プリミティブアートまでコレクションしている「大和プレス」代表取締役の佐藤辰美、近現代美術をコレクションしているファーストリテイリング社長の柳井正。
台湾では昨年から4位を連続飾った受動部品専業のグループ会社YAGEOの社長陳泰銘と、中国磁器、印象派とモダンアートをコレクションしている力晶科技会長の黄崇仁。
香港在住ではウォーホルのコレクターとして知られる不動産投資家の劉鑾雄と、1990年代アートのコレクターであるモニークとマックス・バーガー夫妻。
コンテンポラリーアートの蒐集に秀でている韓国のアラリオ・ギャラリー代表キム・チャンイル、インドネシアの中国人実業家の余德耀の他、中国写実油絵と書画の名コレクターである上海の投資家、王薇と劉益謙夫妻も選ばれている。

今回の1位から6位は昨年同様、トップはLVHM(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループとクリスチャン・ディオールのCEO、パリ在住のベルナール・アルノーとエレーヌ夫妻。今回が8度目の栄冠。
2位はNYの投資銀行家でMETとMoMAの理事も務めるレオン・ブラックとデブラ夫妻。
3位は金融サービス業と不動産開発に携わってきた実業家エリ・ブロードとエディス夫妻。
4位には、昨年に初めてトップ10入りした台湾の陳泰銘。
5位はコネティカット州のヘッジファンドマネージャー、スティーブ・コーエンとアレクサンドラ夫妻。
6位はアメリカの化粧品会社会長で駐オーストリア大使も務めたロナルド・ローダーとジョー・キャサリン夫妻。
7位は昨年8位の海運王・競走馬主として知られた実業家ストラヴォスの長男であるスイス在住のフィリップ・ニアルコス。
8位は昨年9位のグッチを傘下に持つPPR元会長でクリスティーズのオーナーでもあるフランソワ・ピノー。
9位は昨年10位のカタールの王女であるシェイカ・アル・マヤッサ・ビント・ハマット・ビン・カリファ・アル・サーニ。
10位はトップ10新入りで、ウォルマート創業者サム・ウォルトンとヘレン・ウォルトンの娘、アリス・ウォルトンである。

 

   その94 猛暑の画廊散歩のこと

梅雨明けと同時に酷暑の日が続いています。

画廊めぐりを画廊散歩などとしゃれ込んでいる私も、こう暑いとつい外出をためらいがちになり、運動不足気味の今日この頃です。

来週の京都行きを控え、必要最低限の画廊散歩に行ってきました。

銀座を歩くのだからと、重くて嫌なスポーツドリンクを持たされてのお出かけです。

茅場町の井上第ニビルにも寄りたかったのですがパスして、八丁堀のアイガで行われているお絵描き祭りをのぞき、日本橋の不忍画廊の版画展を見て、高島屋から銀座までは地下鉄を利用してしまいました。ユマニテも椿も獺も、その他のいくつかの画廊もすべてとばして、77へ直行です。

77ではタジケンの大津絵という版画展をやっていました。テーマが大津絵風に限定されていたせいかこれまでのようなのびやかなおもしろさがなかったので少しがっかりでした。

途中銀座の歩行天を通りましたが、今日は曇っていたせいか、シャッターの閉った松坂屋前の通りも人出は多かったようです。三つの画廊もそれぞれ盛況でした。

四時半には帰宅という早い帰りでしたが、昨夜遅く今日も朝からレッスンだったので、これだけでもヘロヘロの一日でした。

 

2013/7/13(土)

 

 

   その93 池田万寿夫の原画発見のこと

昨日テレビを見ていたら、池田万寿夫の原画が新たに発見され、テレビ朝日にて公開が始まるとのことです。没後16年目にして新たに発見されたようです。

一点の作品につき何段階かの原画があったようで、あの天才池田にしてこれだけ周到に作品を作っていたのかと、驚きのコメントがありました。

テレビで見ても、発表作品の雰囲気をよく表しており、なかなか面白く良いものだと感じました。

池田と言えば外国のビエンナーレでの受賞をきっかけに、いきなり世界で認められ、60~70年代、時代の寵児となり、版画だけでなく、芥川賞受賞や映画の監督、晩年は焼き物などでもその才能を発揮しました。番組の中でなかにしれいさんは、特に焼き物の完成度を評価していました。

没後16年とのことですが、作家の作品の整理はなかなか大変なようです。

とくに原画や下絵、生前あまり表に出なかったデッサンなどは、作家や家族でも把握していないものがあるようです。

私の好きだった有元利夫の習作やデッサンも没後しばらくして、たくさん出てきたようですが、奥様にもなかなか手を付けることが出来なかったと聞いています。

静岡ギャラリーでの個展をきっかけにあるキュレイターの方が整理して下さったそうです。

奥様の容子さんが「○○さんはすごいんですよ」と驚きながら感謝していたのを覚えています。

2013/7/9

 

   その92 お絵かき大会が六本木へ進出・・・のこと

アートアイガさんから“チームA★お絵描LIVE”(公開制作ですよ~)

という案内状が舞い込みました。

以前お話しました、お絵かき大会の第2弾というべきものです。今回は7名の作家が参加して約157×180の紙に、大作を描くようです。

そして、7月6日から7月15日の土日祝にアートアイガで公開制作された作品は完成されずに、六本木ヒルズ森美術館の入り口ともいえる3Fミュージアムショップ併設の、A/Dギャラリーに持ち込まれ7月24日~8月4日の「チームA★お絵描きLIVE」にて完成されます。

即興性と制作過程をリアルタイムでお楽しみください。とのことです。

GEISAIや展覧会で一部、現場で制作公開されるのは、時々見ることはありますが、あの広い会場でこれだけの作家が一斉に制作する姿は、さぞや圧巻でしょう。考えただけでもわくわくします。

若い作家がライブの形で制作を競い合うのは、彼等(彼女等)にとってもさぞ刺激になり勉強になることと思います。

尚、会場の性格上、何も書いていない紙だけを展示するのは難しいということで、一部アートアイガで描き始めたものをヒルズ3Fのアート&デザインギャラリーに持ち込んで続きを描くということになったとのことです。

 

 

   その91 人の動きが目立ってきた?のこと 

世界文化遺産に登録が決まったことで、富士登山が解禁からラッシュを迎えているようですが、最近どこへ行っても、人出が多くなったと感じるのは気のせいだけではないようです。 

数か月前からですが、季節的なものもあるのでしょうが、銀座の歩行者天国の人出がそれ以前に比べ圧倒的に多くなったように感じます。

これは、上野公園でもそうですし、デパートに行っても、電車にのっていても、良くいく画廊でもそう感じます。

人に話すと、みな一時に比べると、確かに人の流れは多くなったと感じているようです。

季節的なものだけではなく、アベノミクスの効果が徐々に浸透してきて本格的な景気上昇の先駆けであり、これからも継続していくことを願うばかりです。

2013/7/1

 

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   その90 北川健次先生のこと

先日、不忍画廊で行われている『名作のアニマ  駒井哲郎・池田満寿夫・北川健次によるポエジーの饗宴 』という展覧会を見てきました。

うっかり屋の私は、何やら難しいテーマの企画展と思っていましたが、実は北川健次さんのコラージュの個展でした。作家の希望で奥の一角は駒井・池田・北川の銅板による旧作が展示されており、3人の旧作と北川のコラージュの新作のコラボになったとか・・・

不忍画廊ではひさしぶり(5年振り)の個展だそうです。

いぶかしげに見ている私に、遠くにいた作家から声がかかりました。ひとしきり作家の想いを語った後、版画の現状の話になり、今の版画家はしつこさや思い入れが足らないということになりました。「さらっと書いて、それで完成だと思っている。版画の持つ意味が解っていない。タブロウ―と争うには、そこからのしつこさや思い入れがなければ、版画にする意味がない。」

ということになりました。北川さんの、版画に対する思いが今でも衰えていないのに安心しました。

この話を書くために、北川さんのホームページを確認したら、今年になってからもあの奥野ビルや、同じく昭和レトロの井上第2ビルでも個展を行っていたことがわかりました。

私が知らなかっただけで、先生は自分の作品が最もなじむ所で発表を続けていたのです。

こんなすごい作家が珍しくなってしまったのは、本当にさみしいことです。

 

 

   その89 奥野ビルのエレベーターのこと

奥野ビルに行ったらエレベーターのご報告をしなければなりません。

エントランスを入り、ごちゃごちゃの手前に思ったより小さめのエレベーターがあります。横には何やらこまごまとした説明と注意書きがはってあります。この欄をご愛読の方にはもうお分かりでしょうが、それは古い倉庫のエレベーターと同じ注意書きです。じっくりと読んでいると、あとから来た方が手でドアを開け「どうぞ」と言ってくれたので先に入らせていただきました。「何階ですか」と言われ、「5階です」と答えたら、5階はランプがつかないとのことで、とりあえず6階から探検しながら下ることにしました。

後でわかりましたが2~5階は止まらないようにしてあるとか・・・止めることが出来ないとか・・・壊れているとしたらちょっと恐い?

中扉は私の期待道理の鉄の格子でガラガラバシャーンと言いそうなレトロなものでしたが、エレベーターそのものは新しく交換されているようで、至って静かで注意書きされていたような段差の違いなどはそれほどおこらないのではと思いました。

それにしても、その外観と言い、廊下や階段のレトロ感や複雑さ、入居者の雑多さと言ったら、今どきと言ってはおかしいが、面白いビルです。

 

 

   その88 銀座奥野ビルのこと

獺(かわうそ)画廊のオープニング展の案内をいただき、銀座奥野ビル5階の画廊へ伺い、ついでにビルの探検もしてきました。

奥野ビルは1932年(昭和7年)竣工の、もとは高級アパートメントだったようで、まさに探検という言葉がお似合いのビルです。今回探検してみて、銀座にもいくつかある古いビルの中で、奥野ビルが登録文化財に指定され長く保存されることになった意味が解りました。

エントランスは新しく改装されているようですが、各フロアーは終戦後のビルを思わせ、階段を歩いていると昭和40年頃の汚い大学のそれを思い出させます。

二つのビルを合わせたのでしょうか?、中央に何故か階段が二つあり、それを囲むように昔のワンルームだったような部屋が並んでいるという複雑な構成をしています。

そして、その部屋のほとんどが画廊やギャラリーのようで、絵画や芸術にこだわらず、雑多なものが展示販売されています。画廊ビルと言われる所以でしょうか。私が昔よく行った、泰明小学校向かいのギャラリーセンタービルとは正反対のアットホームなレトロ感のある親しみのもてる画廊ビルです。

ある種の愛好家たちが集まり、観光地のようにビル内の各画廊を巡り歩く姿が目立ちました。機会があれば、時々寄ってみたい場所です。

 

   その87  展示替えのこと

 半年ぶりに壁の絵の展示替えをしました。以前は夜中までかかっても、ほぼ一日で年3~4回は行っていたのですが、最近は回数も減り、2~3日がかりでしています。

約25点ほどの作品を天気の良い日に外し軽くふいた後 、黄袋に入れ箱に詰めてしまいます。展示予定に従って作品をだし軽く並べてみます。それからが大変で、ああでもないこうでもないと並べ替えては、幅や高さを調整してかたずけを終えると架け替え終了です。

今回の架け替えは、延べ10時間ほどかかりました。歳のせいか決断力も鈍り体力も衰え、何をやっても時間がかかります。終わるとやれやれという感じです。

年数回のお勤めですが、やはりピタリと決まると気持ちも新たに、気分転換にもなります。爽快です。

今回の展示は、中村徹の陶のシリーズと雲のシリーズ、井上秀樹のスペインの青年の肖像、赤堀尚の裸婦デッサンなどです。

今では昭和レトロとも言える懐かしい作品ばかりですが、当時はみんなバリバリと制作していた実力派作家です。

あらためてながめてみると、しっとりと落ち着いた大人の雰囲気が漂う、なかなかの作品ばかりでホッとします。私たち世代にはこんな作風が合うのかもしれません。

レトロでいながら、なかなか斬新でモダンなところが

 

   

   その86 夏目漱石の美術世界展のこと

お稽古の帰り、上野で降りて芸大美術館で行われている漱石の美術展を見てきました。いただいた入場券が使えたのでやっと義務を果たした感じです。

「吾輩は猫である」や「坊っちゃん」「三四郎」などでおなじみの漱石ですが、実は美術にも造詣が深く、自分でも絵をかいたり書を嗜んだりしています。

芸大美術館ではいつも、学術的ともいえる懇切丁寧なわかりやすい説明と構成がされており、今回も感心してしまいました。私にしては異例の2時間もかけて鑑賞してしまいました。

そのおかげで、漱石の小説に出てくる絵の話や絵からモチーフをえて作られた小説など、漱石と同時代の画家との親交の深さ、付き合いの広さが手に取るように理解できました。留学時代から精力的に絵を見て歩いていたことなど知らない一面も知ることが出来ました。

それにしても、内外を問わず昔の人々の間口の広さには、改めて感心させられます。どこぞの政治家さんにも、爪の垢でも飲ませたいと思うのは私だけではないでしょう・・・・・・。

 

   その85 画廊の夜会のこと 

  GINZA 画廊の夜会は6月7日(金)よると8日(土)の昼、銀座5~7丁目の25の画廊が参加して行われるイベントです。もう、かなり前から行われており、年一回、夜の銀座の風物として定着している感があります。

私も、金曜の4時過ぎに家を出て10数軒の画廊を回ってきました。途中、ツアーのの人達と出逢ったりしましたが、どこも盛況のようでした。

あちこちの画廊で、ワインをいただいたり、時にはつまんだりしながら、説明を聞いたりして楽しませていただきました。

初めての画廊や、かつてよく 行っていたが10年以上もご無沙汰のところもあり、いろいろ興味芯々でした。今でもこのような催しに参加しているところは概して、後継ぎがしっかりしており、どこの世界でも世代が続いていくということはいいものだと感じました。私の取引画廊の多くが、守りに入っているように思われるところがあるのでさみしく思います。

まだまだ生きたい画廊がいくつかあるのですが、疲れてしまい、またの機会に伺うことにし、今日は切り上げました。

 

2013/6/7

 

   その84 寺村さんのこと

 大橋さんのお話をしたら、寺村さんの話もしなければなりません。

先日お伺いしたら、調度有元の画集が拡げてあり、めくっているうちにその中の壺に入った女性の絵のところで「これが寺村さんと初めて見た絵ですよね」という話になりました。もう40年近い前の話です。寺村さんも大橋さんと同じく私とほぼ同世代で、同じ画廊に努めていました。

私の初めての画廊めぐり?で、八重洲からスタートし銀座に廻って泰明小学校の向かいのギャラリーセンタービルの5階にあった大阪フォルム画廊で、初めて応対してくれたのが寺村さんです。

その後、オーナーのEさんと独立し、主に版画を扱う画商さんになりました。版画の世界では一時大阪フォルムの出身者が、一大勢力をなしていたことは前にも書きましたが、この画廊はその中でも中核をになっていました。

惚れこんだ作家を心を込めて売る寺村さんの営業力は抜群で、オーナーと二人三脚で業界をも盛り立ててきました。

数年前に、綺麗な奥さんを亡くされ一時は落ち込んでいましたが、今ではすっかり立ち直り、独身生活を楽しんでいるようです。

先日は恵比寿のツタのからまる画廊と、四谷のお酒のおいしいお店を教えていただいたので、是非行ってみようと思っています。

 

 

   その83 大橋さんのこと

先日のギャラリー葱での加畑省彦さんの個展の際、大橋さんのお話をできる人も少なくなってしまったということになりました。

大橋さんは私とは年代も近く、境遇も同じ平凡な家庭の出身で、ごく普通のざっくばらんな方で、よく話が合いました。

バブル崩壊後、当時お勤めしていた大阪フォルム画廊から独立し、銀座7丁目の黒川記章の設計した小さな船底のような棲家的店から出発し、3丁目あたりの裏で屋根裏のような場所に、画廊らしい店を開き、その後、立ち退きで6丁目に普通の画廊らしい店を持つことができました。

一人で切り盛りしていた店は、人柄のせいかとてもくつろげる雰囲気で、作家や教授、お客様などが集まり、じっくりお話のできる良い場所でした。

若い有望な作家たちも集まり、これからが楽しみだったのですが長い不景気には勝てず、残念ながら店を閉じ、本人もお亡くなりになってしまいました。

いろいろ語り合い、勉強もさせていただいた懐かしい人です。

 

 

   その82 加畑省彦さんのこと

ひさしぶりに案内状をいただき、銀座松坂屋裏のギャラリー葱さんで行われている、加畑さんの個展を見に行きました。やはり、昔気にしていた作家さんの個展と聞くと一応見ておかなければという気になるものす。

葱さんは、昔私が足繁く通っていたアートギャラリーおおはしさんの上で、営業していたらしく、その頃1~2度お伺いしていたかもしれません。

加畑さんは、昔は孔版の作家として精力的に作品を制作し、大橋さんや今でも私が頻繁に出入りしている椿さんなどで静謐な詩情あふれる版画を発表していました。孔版の中でも、ほとんど手掛ける人のいなかった、ガリ版を基本にしたものが多く、当時、廃校になる学校からテストやお知らせを刷るときに使った謄写版の材料を大量に手に入れたなどという話を聞いたことを覚えています。

しばらく前から、余り作品を目にしなくなっていましたが、今回話を聞くと5年ぶりの個展だそうで、最近ほかの仕事もしているので余り作品ができなかったとのことですが、やっとリズムがつかめてきたのでこれからは、作品も順調に作れるだろうと話していました。

今は、版画も作っているが孔版ではなく銅板が多いとか・・・

今回の作品はフレスコとパステルで、フレスコは壁材に描いた後、薄くはがし取り、フレームに張ったキャンバスに貼り付けるという作業をし、フレスコでも軽く持ち運べるものにしているそうです。フレスコ独特の深みと鮮やかな発色があり、なかなか面白いものでした。

作品の内容的には、もっと今風の個性があったらいいのになと思いつつ帰ってきました。

 

 

   その81 西武デパートのこと

レッスンに出かける前に、渋谷西武の大絵画市を見てきました。西武と言えばかつては感性のデパートとして、堤清二さんを先頭に若者を中心とした百貨店として一世を風靡した時代がありました。

池袋には西武美術館を持ち、洋画壇の新人の登竜門であった安井賞展なども開催し画廊も充実、渋谷では主に若い作家の展覧会なども行っており、私もときどき出かけたものです。

今回は、お得意様限定のもので、出店画廊の顧客には案内されていなかったようですが7階には8つの画廊がそれぞれのブースに若手作家の作品を並べソファーなども置かれてゆったりしたものでした。8階にも千住と藤田、そしてピカソ、ミロ、シャガールなどの外国勢の作品が各コーナーに並べられていました。

7階ではKさんのアトリエが簡単に作られ調度、作家が来ており、座り込んで若い女性客と語り合うようにお話をしていました。アトリエに飾られた絵と合わせるように彩色されたドレスを身にまとい、床まで統一されたコーナーは、ファッションショーかと思わせるものがありました。

ゆったりして明るい店内は、銀座や日本橋とは違った魅力を感じました。

2013/5/15

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   その80 山本文彦さんのこと

その79の現代洋画サミット11に選ばれていた先生の一人に山本文彦さんがいます。初めてお会いしたのは、先生が筑波大の准教授になられる以前のことです。

私が足繁く出入りしていた大阪フォルム画廊東京展での、先生の個展のときだったと思います。それ以前の先生の作品を時々拝見し、緻密な構成力に感心、頭のいいすごい作家だな、この先生の頭の中はどうなっているのだろうと驚かされていました。

作風は青からグりーんに代わり、大地の根っこの中に女性の顔が浮かび上がる作品を手掛けている頃でした。何層にも塗られたマチエールは重厚で、大地や人間の重みを感じさせるものでした。

寡黙な先生は、女性の上半身を描いた小品を前に手の甲を指差し、身振りを加えながら、「この手のここが難しかったんですよ」と、おっしゃっていたのが印象的でした。

その後、筑波大の准教授になられ、もともと寡作だったのがさらに発表が少なくなり、マチエールも薄く未完ではないかと思われる作品を時々見かけるようになってしまいました。・・・教えるのが好きだった先生は教職に没頭されていたのだと思いますが、コレクターとしては、何ともさみしい時期でした。

ひさしぶりに見た今回の新作では、マチエールの重厚さは戻っていましたが構成力のすごさや迫力はもう一つかなと思ってしまいました。

年月を経て、相応の落ち着きを見せているのでしょうか?

 

 

   その79 現代洋画サミット11のこと

花展の出瓶もあり、この6日間で7回日本橋三越本店に出かけています。

ひさしぶりに6階美術画廊をのぞくと、現代洋画サミット11という、洋画壇の重鎮11名によるグループ展のようなものを開催していました。

女性の先生1名をのぞいて、若い頃からなじみのある先生ばかりで、作風の変わった先生も2~3いらっしゃいましたが、ほとんど見慣れた感じの作品ばかりでした。

30年以上も前のことですが、デパートをはじめ大阪フォルムや泰明、藤井、日動、八重洲、大阪梅田、彩鳳堂、もりもとなどの各画廊で国内洋画を追いかけてみていたのを思い出します。・・・その頃は講師や助教授クラスの先生方が、今ではみんな教授を終わり名誉教授になっています。

このクラスの作家の作品からはしばらく遠ざかっていた私ですが、11名の中では、今は亡き森本画廊の親父さんが高く評価していた、森本草介さんの作品にあらためて魅力を感じました。

やわらかく落ち着きのある、何とも言えぬ透明感を持ったマチエールは素晴らしく、絵の中の女性は素敵でした。

それにしても、さすが三越日本橋、室町美術からの流れを汲んでいるのであろう格調の高さは、展示方法も含め大したものだと感心しました。

高島屋とは、また違った魅力を持っています。

 

 

   その78 デパートの絵画市のこと

アベノミクス効果のせいか、デパートでの絵画市の大きなチラシを見かけるようになったことは前にも書きましたが銀座松坂屋で、大掛かりな閉店セールの一環として美術品のセールも行っているのを思い出し覗いてきました。

6階の大半を使い、近現代の国内作家の作品を中心に、ずずーんと並べられたさまは、まさに壮観でした。デパートでのこんなに大々的なアート市はここ10年くらいお目にかかっていなかったように思います。

かつて、良く見かけたり、興味を持ったことのある作家も多く懐かしい思いもしました。値段的にもデパートとしては、こなれたところで表示されており、初めて美術品を購入するにはなかなか良い機会なのではないかと感じます。

販売員も多く、ゆっくり見ていると声をかけられてしまうのには閉口します。当たり障りのないセールストークには、内心私の方が詳しいんだよと思ってしまうのは意地悪でしょうか。

それにしても、このご時世まだ高いんじゃないの・・・・・

 

 

   その77 壺中居さんのこと

日本橋の画廊に伺うと、東京アートアンティーク・日本橋京橋美術骨董祭りを開催中とのことで、お隣の壺中居も入れますよといわれ、久しぶりに入ってみました。

壺中居さんは、大正時代に創業された東洋古美術を扱う美術商で、「壺中の天」をめざし、静かにゆっくり古美術と対話する場所というコンセプトで営業されているようです。

傍から見ると格式が高く、なかなか入りずらい風格を持っていますが、古美術をゆっくり見るという点からは、静かで落ち着いた良い場所だと思います。ただ、今日は特別だったのかもしれませんが、何人ものおじさんがあちこちで低調にお迎えして下さるのには恐縮してしまいます。開店直後のデパートに入り、目的の売り場まで行くとき、ずらりと並んだ店員の方たちに次々と挨拶される、あのこそばゆさに似たものを感じます。

仕事の関係で定期的に宇都宮まで行くこともあり、現代陶芸には多少の興味も持ち、以前はギャラリー壺中居さんも含め勉強させていただいたこともありますが、古美術にはほとんど造詣がありません、しかしこうして落ち着いてみてみるとその奥深い魅力はなかなかのものだと感心しました。

 

 

   その76 病院併設の画廊のこと

特別でない限り、絵を見るために遠出はしない私ですが、今回はむかしむかし住んでいたこともあり、少しは土地勘があるので横浜西口まで出かけてきました。

岩淵華林の版画展が横浜のフェイアートギャラリーで開催されていたのです。岩淵さんの版画自体は他の機会でも見ることができるのですが、今回出かけたのは、開催している画廊に興味があったためです。

病院のロビーなどで絵の展覧会が行われるのはたびたび聞きます。私のところもプライベートですが、教室に絵をかけてギャラリーとして使ったりしています。

フェイアートギャラリーは、眼科医で画家、実業家でもあるF氏が病院の入り口横に設けた、専用のアートギャラリーで3週間に1度くらいの割合で企画展を開催しているようです。

医者の先生のコレクターが減ってしまったことはたびたび書いていますが、このようなお医者さん?が、今でもいらっしゃることは、とても頼もしい限りです。

F氏は白内障の権威らしく、病院は見上げるような個性的なビルで、横浜駅とは2台の送迎バスを運行しています。私がお世話になっている平井の二本松眼科やお茶の水の井上病院なども、白内障の治療で有名ですが、改めてその凄さを認識した次第です。

ともあれ、この世知辛い世の中、病院や事業で成功した方たちがアートに興味を持ち、その普及と若手の育成に力を貸していただけることを切に願う次第です。

 

 

   その75 版画・たばこのある風景のこと

渋谷パルコの先に、たばこと塩の博物館という施設があります。

今では、すっかり悪者扱いにされ肩身の狭いたばこですが、少し前までは憩いの時間にとって、重宝な嗜好品であり多くの人から愛されるものでした。そんなタバコと塩を主に扱っていたのが旧専売公社、いまのJTです。

その日本たばこ産業株式会社が、明治から昭和の代表的な小説の中に出てくるたばこのシーンをイメージして、1979年から1991年までの約12年間にわたり、60人の画家に依頼して72点の版画を制作し、文章と版画を並べて企業広告としていろいろな雑誌に掲載していました。

ひさしぶりに、この72点の版画がたばこと塩の博物館の特別展示室に

煙に寄せたメッセージ

~版画・煙草のある風景~

                               として展示されたのです。

8割程度の作品は、制作された当時に見たことがあるものですが、改めてこうして全体を眺めてみるとすごい企画だったのだと感心します。近現代の代表的な日本文学と、制作時の代表的な画家がそれぞれのスタイルで版画を制作し芸術作品として完成させ、今でいうコラボレーションの形で広告として使われていたのです。

たばこもそうですが、今なぜこのような余裕がなくなってしまったのかと思うのは私だけでしょうか?。

 

 

   その74 佐竹邦子さんのこと 

京橋のGallery東京ユマニテで開催されている、佐竹邦子さんの個展を見てきました。

「版画技法入門講座リトグラフを作ろう」発刊記念と銘打たれた展覧会は、久しぶりの佐竹さんの版画展で、大型の作品を中心に、迫力がありみごたえがありました。版画的要素にプラスし絵画的要素が前面に出てきたのにも好感が持てました。

作家は風を「目に見えないもの」=「風の分子」とし、活力の原動力であり、第一歩のエネルギーと捉え表現しています。

木によるリトグラフ(木リト)で制作された作品は、多くの色を使いカラフルに、躍動感あふれる仕上がりとなっていますが、色は10色ほどで、版も5~6版くらいしか使っていないとか・・・・話していても、そのテクニックやバイタリティに感心させられます。

今や、最も若くして、多摩美の版画ーリトグラフ系の准教授となられ作家としてだけではなく、指導者としても注目されています。

 私が、佐竹さんの作品を初めて見たのは、師である小作先生が持ち歩いていた、数十枚の学生の作品の一点でした。先生の勧めもあり、1,000円でその作品を購入したのを覚えています。

懇意にしている額縁屋のK氏の紹介で、日本版画協会展の会場で、初めてお会いしたときは疲れていたのでしょうか、普通のおばさんにしか見えなかったのですが、順調に教育者、作家としての道を歩まれているので驚いています。

ただ、教育が面白くなると、作品発表が少なくなり、往々にして作家活動がおろそかになるのが心配です。特に、これまでの例では、女性にその傾向が強いのが気になります。

 

 

   その73 美術界にもマグマを感じる(?)のこと

最近、画廊の常設展やオークションをのぞいていて感じることがあります。各画廊とも来たるべき絵画ブームに備えて、作品の仕込みに入っているのではないかということです。

アベノミクスの効果は各方面で顕著になりつつありますが、仙台で始まったデパートの好景気は全国のデパートの高額製品の販売にまで広がりました。

通常、株式の上昇から、不動産市場の好況に入り、最後に美術ブームになるのがこれまでのインフレのパターンです。今回は、早くもデパートの絵画市の大きなチラシや広告が目につくようになりました。各画廊やオークションでもそれなりに販売額が上がってきているようです。

期待先行かもしれませんが、なにか、ふつふつとマグマが動き出しているような、そんな動きを感じます。

ゆっくりでよいから、アベノミクスの効果の持続を願っているのですが・・・・、我々庶民にも効果が実感できる時が来ることを願っています。

 

 

   その72 東京スクエアガーデンのこと

京橋再開発ビルの植栽については前にも書きましたが、そのビルが、東京スクエアガーデンとして完成し、銀座線京橋駅とつながりました。ビルの地下1階が駅前広場として緑と空が広がります。

環境重視型のビルとして高層化が実現されたようで、前に、中央通り沿いでははじめてみると 書きましたが、環境への取り組みは半端ではないようです。

大きな木でぐるりと囲んだ中には、あちこちに花壇が置かれ、ビルのベランダにも植木や花がびっしりとおかれています。

京橋の丘(仮称)として、低層部高さ30メートルまで、広さ約3000㎡の緑あふれるビルは東京都グリーンロードネットワークの一端を担うものだそうです。

この季節、桜をはじめとする赤や白や黄色などの花が咲き、それは綺麗でほっとする景観を演出しています。今はまだ木々も、大きさの割にひ弱さを感じますが、数年後には立派な緑の丘になることを考えると楽しみです。

まわりにも、ぽつぽつ画廊が増えたりし、私の良くおじゃまする画商さんも活性化を考え期待しています。

 

 

   その71 銀座の桜のこと

東京のソメイヨシノは、ほぼ散って葉桜となってしまいましたが、月に一回は通る、銀座1丁目の桜通りの桜は今日が見ごろでした。ここの桜は八重桜で、ソメイヨシノに比べ、鮮やかな紅色の花を付けます。

大きめのかたまりに咲く、紅色の八重桜は、少し重そうなくらいで豪快ですが、とても美しく感じます。これまでにも何度か見ているはずですが、今年はことのほか桜が気になって、あちらこちらの桜を見直してしまいました。

改めて気にしてみると、日本には驚くほど桜の木が多く、どこでもお花見ができるのを発見します。これも今年の東京の桜が、一斉に咲いたせいでしょうか?

銀座の桜通りの、中央通り寄りには多くの画廊があり、何軒かはのぞかせていただいた画廊もありますが、私の知らない画廊がいくつもあります。

2013/4/4

 

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   その70 地下鉄はかなり遠いのこと

午前中の北千住でのレッスンを終え、麻布十番のPALETTE GALLERYで行われているコレクター山本冬彦と御子柴大三が選ぶ若手作家展を見に行きました。

六本木駅で日比谷線からこれでもかというくらいエスカレーターで降り、大江戸線に乗り換えて麻布十番へ、また、これでもかこれでもかとエスカレーターを乗り換えて、やっと、地上に出ました。駅からは3分の画廊です。

一通り作品を見て、作家や画廊の方とお話をして、さて次は銀座へと思い、道を尋ねると、六本木へは地下鉄を利用しても歩いても15分位とのと、・・・

それって、ホームまでがとてつもなく遠いってこと・・・・・

六本木ヒルズの建物を目当てに歩き、六本木から日比谷線で銀座に行きました。

皆さんもご経験があることと思いますが、あとからできた路線のホームはとても深く、駅までの距離よりもずっと遠いことがあるのです。

いつまでたっても地下鉄になれない私には、東京中に散らばった画廊を巡るのは大変です。

画廊散歩とわりきって、おおらかに歩くことを楽しむようにしたいと思います。

そういえば、桜の季節に六本木から青山墓地を通って根津美術館、原宿に出る散歩は今年もできませんでした。

 

 

   その69 アイガお絵かき大会のこと

いつも楽しい企画をするアートアイガさんで、〝アイガ★お絵かき大会”という、ライブドローイングと展示の企画展をしていました。

3月16,17,23,24の各土日にライブドローイングを行い、26~30日に展示するというものです。今回がはじめてということもあり、大混乱だったようです。

狭い画廊に、6~7人の作家が壁に紙を貼るところから始め、絵を描き、日を追うごとに完成していきます。

立って描く人、椅子に乗る人・ひざまずく人、はたまた床に座り込む人・・・・絵をかくスタイルも様々です。

皆さん張り切って、大きな絵に挑戦したためライブ中には仕上がらず展示期間にも制作を続けていました。

若い女性作家がほとんどで、このような場を与えられたことをよろこび、楽しんでいるようでした。

作品の内容も、皆さんやさしくて、かわいいもの(画廊の意向?)だったのが少し気になりましたが、着実に腕をあげ、大きな作品をまとめ上げる技量を身につけていることに感心しました。

 

   その68 東京アートフェア―のこと

3月23日(土)24日(日)は有楽町のアートフォーラムで、東京アートフェアが開催されていました。日本では最も大きなアートフェアと認識しています。

かつては、外国のギャラリーも多く参加し、その年の美術界を展望する、華やかでにぎやかなものだったように思います。

かつてはと書かせていただいたのは、近年、私にはどうも違和感のあるものに変わってきているように思えるからです。

まず、数年前から骨董商と老舗画廊の二代目の参加が多くなってきたことです。そして、貸画廊を運営している会社は出店できません。

精力的に企画展を行いながら、一部のスペースを若手の育成のために使っている画廊が出展できないのです。

その結果、数年前はあちこちの画廊から、招待状やらパスポートが贈られてきた私のところへは、今年は一枚の案内状も届かない結果となってしまいました。私の主に出入りしている画商さんは、全社、出店を取りやめてしまったということです。

時期を同じくして、六本木のミッドタウンでは、コンテンポラリー系の有力画商さんが出展した、G-Tokyoも開催され、23日(土)は六本木アートナイトとめいうって街をあげてイベントが行われていたようです。

どちらを見ようか、両方行こうか、さんざん迷ったのですが、結局、両方やめにしてアートアイガさんのお絵かきの途中をのぞいて、川口の花展とスカイツリーのお花見に行ってきました。

いまひとつ、あーとに乗り切れないさみしい一日でした。

 

 

   その67 木場の画廊のこと

清澄の画廊に寄ったのは、実は、木場の画廊に行くのが目的でした。

木場には東京都の現代美術館もあり、美術関係のひとつのスポットでもあります。

日本版オリエ ントエキスプレスのレストランの角を入り、3~4軒先の向かいに、EARTH+GALLERYがあります。谷口朋栄「花が咲うように」という個展をしていました。

こちらも、元倉庫を画廊にしたもので、天井は高く、広々としています。1階はカフェコーナーもあり、ゆったりと気のきいたスペースです。2階もギャラリースペースで1階にもまして広く、現代美術にはチョット洒落たうってつけのところでおもしろい展示をしていました。

本命の谷口朋栄展は、なかなか筆さばきもよく好感の持てる作品が並んでいました。花と少女がテーマだったせいか、どこかで見たことのある作品と思い、帰ってネットで確認したら、アートアイガさんで扱っているオチマリエさんの作品に、感じがよく似ていました。

オチさんは、前から気になっていた作家ですが、谷口さんも気になる作家になりそうです。

 

 

   その66 清澄の画廊のこと

ひさしぶりに清澄庭園の裏にある画廊に立ち寄りました。

向かいは生コン工場、隣はタクシー会社、すぐ先は川というロケーションは、スカイツリーのできる前の場所に似ています。

倉庫だったビルは、今でも4階までは大きな倉庫で、5~7階に9つの画廊が入っています。

荷物用の大きなエレベーターは、使用中のランプの消えたのをねらって呼ぶを押さないと来ません。乗ってからも一つの階のボタンしか押すことができず、降りたら、閉るボタンを押してドアを閉じておかなければ次の人が使えません。人間用ではないので使い勝手が悪く、待ちくたびれて階段を使うことになってしまいます。

画廊スペースは、広く、天井も高いので現代美術の展示には向いています。がらんとした空間に、大きな作品が並び、勝手に見てってくださいという感じで、9つの画廊もそれぞれの使い方をしているようです。

屋上には、村上隆で有名になった小山登美夫ギャラリーも入っており、現代美術系の画廊の典型的な一つのスタイルだと思います。

 

 

   その65 ヒット作品のこと                     2013/3/11

BSでテレサテン生誕60周年記念スペシャルを放送していました。

台湾の美空ひばりと言われ、一時、大変な人気がありましたが、いつの間にかアクシデントに見舞われ、早逝してしまったというのが私の実感でした。

3年連続の、日本有線大賞受賞は今でも輝く、勲章のようです。

そのシルキーボイスと確かな歌唱力は、今あらためて聞いても素晴らしいものです。

およそ、あるものがヒットするには、確かな基本となるものとプロデュースも含めその時代にマッチすることが必要だと思います。

美術の世界でも「画家なら絵が上手くて当たり前」といわれるように、ずば抜けたテクニックと時代に即した創作力と売り込みが必要です。私の関係する生け花の世界(日本の芸能、文化)でも「不易と流行」と言って、いつまでも変わらないものと、時代時代で変わるものとのバランスが大切です。守るべきはどこまでも守り、一方で、時代の要請に合わせて柔軟に変化していくということです。

この基本的に必要な技術と考え方、そして、時代に受け入れられる内容を見抜くことが大変です。

長年、絵を見続けていますが、いまだにわからないことだらけです。

 

 

   その64 作品ゲットのこと

富田菜摘さんの、金属廃品で作られた、お猿の『福』をゲットしました。佐藤美術館の個展に出品されていたものです。

小さな作品ですが、今日、改めて画廊で作品を見るとかわいくて、できばえも最高なので感激しました。まだ、箱ができていないので後日の引き取りということになります。

この作品は、富田さんのツイッターをチェックしていたら、全作品の映像が載っているコーナーにあたり、たまたま隣で見ていた妻が「これならいいよ」と言ったので手元に置くことにしたものです。

大きな個展に出た、こんなにいい作品をゲットできるなんてラッキーです。

今回の佐藤美術館での個展をきっかけに、富田さんの作品は新聞の紹介だけではなく、多くのメディアに取り上げられました。テリーさんの番組やたけしのニッポンのミカタなど人気番組で紹介されたことはよかったと思います。

残念ながら、アトリエでの制作風景が紹介された番組を見そびれてしまったのが心残りです。

 

 

   その63 銀座のうつり変わりのこと

一週間ほど前になりますが、丸源ビルのオーナーが脱税で逮捕されたというニュースがマスコミをにぎわせていました。

丸源ビルと言えば、バブル華やかなりし頃、〇の中に源の字のマークの下に数字の番号の入った派手なネオンのビルが、たくさん建っていました。一体いくつあるのだろうと思ったこともたびたびです。

マスコミによれば、世界中にビルを所有し、世界の資産家番付けにもたびたび登場していたとか・・・・・銀座には現在でも7棟のビルを所有し、地図を見ると7~8丁目に集中しています。その中の4棟は並木通りにあり、ほとんどがクラブやスナックが入っているようです。

このエリアは私のホームグランドとも言えるところです。夜のお姉さま方の変遷については以前にも書きましたが、店子が10分の1にも減ってしまっていたのではオーナーでなくとも大変なことです。クラブのママさんらしき人にもあまりすれちがわなくなったのも当然です。

並木通りの5~8丁目はもともと画廊とクラブの多いところでしたがバブルの崩壊後衰退し、一時は資生堂さんのがんばりもあり、銀座でもいち早く洒落た通りとして家賃の高さで有名でした。高級ブランド通りとして世界の名だたるお店が軒を連ねていましたが、いつの間にか1~4丁目の方が綺麗になったのを感じていました。

しかし、今また、資生堂さんが本社を改築しており、5~8丁目が輝きを増してくるのでしょうか?

めまぐるしい変遷は、丸源のオーナーでなくとも大変なことです。

国民の皆が豊かになれればよいと思います。

 

 

   その62 仏教美術(部分)のこと

いつもお正月(1月)には、深大寺の元三太子にお参りに行くのですが、今年は喪中ということもあり、今日行ってきました。古いお札をおさめ、新しいお札をいただいてくるのですが、きちんと御祈祷をしていただきます。

毎年思うことですが、さほど広くないお堂に、7人もの僧侶、行者さんで祈祷をしてくださいます。お太子様の像は秘仏なので、50年に一度しか見ることができないそうですが、荘厳な飾りの中で、両側には、護摩木のたかれる炎が上がり、迫力のある読経が流れ、大太鼓の音が響き渡る様は圧巻です。罰当たりな私は、大したありがたみを感じるわけではありませんが、いつもその凄さに感心します。美と音と火に包まれ、全身で感じる何かがあります。

前厄から毎年続けていることですが、1月は寒くて大変だから、これからはお花を見ながら、暖かくなったらこようかなどとのんきなことを言いながら帰ってきました。

 

  

   その61 五美大展のこと

この時期、美大・芸大の卒業制作展があちこちで開催されています。各地の画廊などで開かれるのも入れると、かなりの数になると思います。

東京芸大はキャンパスを中心に上野で行われています。分厚いカタログなども発行され、さすが芸大といったところです。

東京の五つの私大が集まって、現在新国立美術館で行われているのが五美大展です。すなわち多摩美、武蔵美、女子美、日大芸術、東京造形の美大・芸術学部の卒展をいっぺんに見ることができます。

各学校のキャンパスを回るのが一番良いのですが、五大学の今年の全貌を一度に見ることのできるこの展覧会は、かなり効率的です。

見学者には、各大学の関係者はもちろん、ギャラリストやコレクターも多く、この卒展を見て、将来有望な作家をマークしたりしています。

今年も目を引く、有望な作家が何人かいるように感じましたが、さてこの中でいつか見た作家だなと将来お会いすることになる人は何人いるでしょうか。この不景気の時代に、多くのお金をかけて美大を卒業した作家が、一人でも多く大成されることを願っています。

    

その30 画廊散歩のこと

      引退コレクターを名乗る私は、自分の画廊めぐりを、画廊散

      歩と称しています。

      万歩計が流行った頃、歩数を計ってみました。銀座だけでは

      健康のための散歩には、とても足りないようです。そこで、京

      橋・日本橋と少しづつのばし、最後は、秋葉原から神田・日本

      橋・京橋を経て銀座九丁を巡り新橋まで歩くと、調度よいとい

      う結論に達しました。しかし、健康のためには、週二回くらい

      は歩きたいとなると、東京の画廊が、あちこちに散らばってい

      るとはいえコースを作るのも、なかなか大変そうです。

      涼しくなったら、またよく考えることにしましょう。

                          暇を見ながら・・・・・            

                                    2012/9/1     

 

 そのⅠ 版画のこと                            2012/5/20

        浮世絵版画に代表される、日本の版画は日本を代表する

        芸術文化です。棟方志功や池田万寿夫を筆頭に1960~

        70年代を中心に日本の版画は世 界のビエンナーレやトリ

        エンナーレで数々の受賞を重ね、 現在の村上隆や奈良美

        智に匹敵するような作家を多数輩出しています。